サイモン・ラトル&バイエルン放送響、ストラヴィンスキー:火の鳥(全曲版) 【CD】
ラトル3度目の「火の鳥」全曲盤。磨き上げたバイエルン放送響の演奏、ラトルの解説も聴きもの
バイエルン放送響の首席指揮者に着任して以来、得意曲のリリースが続くラトル。ストラヴィンスキーも彼の十八番の一つで、「火の鳥」については組曲版ではなく全曲版にこだわりがあります。これまでにバーミンガム市響(1987)とロンドン響(2017)との録音があり、映像ではベルリン・フィルとの2005年のライヴがありました。ラトルの解釈は最初の録音時点でおおよそ出来上がっていたようで、大きな変更は見られませんが、仔細に聞けば、個々の曲の性格付け、表情付けがより緻密になっているように感じられます。このあたりはオーケストラのアンサンブル能力やソロを担当する奏者の技能、彼らの音色といったものを十分に引き出すラトルの巧みさを反映しているようです。バイエルン放送響とそのトップ奏者たちの巧みさについては今更言うまでもありませんが、当アルバムで注目すべきは、音響に定評のあるイザールフィルハーモニーで、リハーサルまで含めると6日間もかけて収録されたことによる明瞭な録音です。ガスタイクの改修工事中のつなぎ役として作られたイザールフィルハーモニーですが、永田音響設計の豊田氏による音響設計の甲斐あってか、大オーケストラの演奏会でもバランスが良く、強奏でも濁らず、細部が埋もれることがありません。ここでもバイエルン放送響の艶のある音色が捉えられています。要所で聴かれるソロ、特に管楽器群の巧みさは見事で、パーカッションの強打やオーケストラが全奏で盛り上がる部分の鮮やかな色彩感と迫力も圧巻。
またこのCDには、バイエルン放送のインターネット動画配信の一つ、Discover Music with Simon Rattleから、「火の鳥」編の音声が収められています(8月下旬時点では未配信)。内容は作曲者と作品の紹介や、リハーサル・シーンをまじえたオーケストラの音作りのポイントなど、ラトルが英語で平易に語るもの。全曲版について「私がこのバージョンが大好きなのは、のちの実用的なバージョン(=組曲版)に比べて、10倍も色彩豊かに思えるからです」「こちらのほうがずっと難しいことはたしかです。オーケストラはこの曲をマリス・ヤンソンスと何度となく演奏し、いつもすばらしい演奏をしてきました。ただ、彼は組曲版を得意とし、なぜかバレエ全曲版には関心がなかったのです。そのため、今回はみんなこれまで演奏してきたことを一旦忘れなければなりませんでした」と熱を込めて語っています。ホルン・ソロについて言及した箇所では「今シーズン私たちは『火の鳥』を15回演奏したと思いますが、カルステン(ホルン奏者)は私を15回泣かせました」「最後の2小節で彼がやっていることは、教えられるようなことじゃないんです。あの音色の変化。息をのむようなホルンの演奏」と称賛。ラトルの解釈のツボや、オーケストラとの関係が窺われる、興味深く心温まる内容となっています。ブックレットに文字起こしはありません。
※国内仕様盤にはストラヴィンスキー研究者の池原舞氏の解説と、後藤菜穂子氏によるラトルの解説トークの日本語訳を掲載します。
【録音】
2025年11月3-8日 ミュンヘン、イザールフィルハーモニー・イン・ガスタイクHP8(ライヴ)
(メーカー・販売元資料)
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